この写真を見ると、輪島の松本石太郎漆工房「遊庵」を訪れた方はご存じかもしれませんが、蔵ギャラリーに架かっている、塗・加飾の見本板(手板)パネルです。

店主は、来訪された方へは輪島塗の特徴などを説明されていますが、限られた時間ですので、この様な他の塗師屋や漆芸美術館にも無い、文化財資料とも成る様な「見本板パネル」の説明が聞けなかった事と思います。

実は、輪島の産地が如何にして、漆の技術を高める為に努力して来たかの歴史をうかがえる重要な資料なのです。

その事を説明する前に2枚の写真をご覧下さい。
一枚目は平成5年に発行された「百工比照」(加賀藩五代藩主 前田綱紀が収集分類した工芸全般にわたる技資料)の中の漆技の見本板資料が表紙となっています。

加賀藩の藩主は歴代工芸を大切にし、その技術を高める為に、江戸や京からも絵師や工芸家を招聘し、金沢の地を全国でもまれな、多彩な美術工芸の地となる礎を作ったのです。

次は、百年以上前に海外の万博で紹介された漆技の見本板パネルが載っている写真です。

変り塗を得意とする鞘塗師の技の手板です。

これらの写真からして、松本石太郎漆工房の歴代当主が単なる一塗師屋の考え方ではなく、輪島塗の産地全体的な意識を持って仕事をしていた事をうかがえます。

来週は、輪島の産地の意識の高さはどこから生まれたか。
その様なことを、引き続き書いてみます。